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8月9日は何の日かと、日本人とシンガポール人に同じ質問をぶつけたら全く異なる回答が返ってくることが予想される。日本人にとって1945年8月9日は広島に続いて長崎原爆投下の日という悲劇である一方、シンガポール人にとって1965年8月9日はシンガポールがマレーシア連邦から追放されて独立を余儀なくされた運命の日だというだろう。

ということは、今年2015年8月9日は日本の長崎被爆70周年とシンガポールの独立50周年である。長崎原爆投下は言うまでもなく、7万人以上の死者と後々無数の被爆者と甚大な被害を出した歴史的災難である。福嶋亮太氏の「復興文化論」(青土社)によると、白村江の戦い後にできた白鳳文化や応仁の乱後にできた東山文化で見られるように、近代に至るまで日本文化は常に復興文化として発展してきたように思われる。第二次世界大戦後の日本にはサブカルチャーができたという。「豊かさを社会の中枢に置こうとした時代」と位置づけられ、「社会の繁栄を誇示しつつ、階級、年齢、性別を横断して誰もが楽しめる多種多様なエンターテインメント(サブカルチャー)を作り出した」。代表作として「ゴジラ」や「鉄腕アトム」などのアニメ、ゲームといったサブカルチャーが挙げられる。

復興した=生まれ変わった1945年の日本と1965年に誕生したシンガポールという二つの国を比較してみると意外に面白い共通点が見つかった。今年独立50周年を迎えるシンガポールは戦後の日本と似たような歴史を辿っているように見える。戦後から20年の日本はアジア初のオリンピック開催地となり、あれから1990年に続いた経済急成長を遣り遂げた日本と同様に、シンガポールは独立から20年が経った1986年に停滞していた経済から一気に立ち直って、あれから経済成長に拍車がかかって今や一人当たりGDPが世界屈指の国になっている。

また、戦後から50年が経った1995年には阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件が発生し、社会的にも経済的にも、戦後初めて日本という国を抜本的に変える出来事が起きた。その間には四日市喘息や水俣病などの4大公害病をはじめ様々な出来事があったが、あれぐらい人的・経済的被害をもたらした災害はなかっただろう。

同様に、シンガポールは独立50周年を迎えようとしていた2011年の総選挙には与党PAPの支持率が60%に低下し、独立後最悪な選挙結果となり、2013年にシンガポール独立してから初の暴動が起き(1969年にも暴動が起きたので正確には2回目)、そして50周年を迎える今年にはシンガポールの建国の父であるリークァンユー元首相が亡くなる等、歴史的な出来事が連発している。
50歳になるシンガポールはまさに、日本が敗戦から復活した50年の歴史を辿っているように感じずにはいられない。もちろん、両国の歴史背景、人口動態、現在の経済状況など、様々な要素が関わっているので因果関係は特定できないが、シンガポールで生まれ育ち、現在8年目の日本を迎える私からみると、不思議な発見ができたわけだ。
少し話が変わるが・・・
敗戦から70年が経ち、被爆者の平均年齢が80歳を超えるという現状で、同じ過ちを繰り返さないためにいかに伝承していくか、という課題を抱えている日本は、皮肉なことに原子力発電所を再稼働しようとしているという矛盾が残っている。この前日本人の友達と学校の歴史授業について話していたら、日本の歴史授業では歴史的出来事の年号など、「事実」を暗記させられるが、なぜその出来事が起きたかなどといった「過程」または「起因」はあまり学ばないという。歴史には正解などないので、過去の過ちを繰り返さないためには、日本に限らず私達はまず多角的視点から歴史を学ぶ必要があるのではないだろうか。

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