昨日ロンドンオリンピック女子卓球のシングルス三位決定戦で日本の石川選手がシンガポールのフェン選手に破れて、シンガポールが個人戦で52年ぶりにメダルを獲得することができた。シンガポールは1960年のローマオリンピックでウェートリフティングの種目で初めてのオリンピックメダル(銀メダル)を取って以来、2000年と2004年のオリンピックで両方、女子卓球で惜しくも4位までしか至らず、メダルを逃がしてきた。ちなみに、2004年の北京オリンピックの女子卓球団体戦で銀メダルを獲得した。

日本がオリンピックでどんどんメダルを獲得する度に、歓声やテンションが上がるばかりなのは当たり前かもしれないが、シンガポールではとても意外な現象が起きている。52年ぶりにオリンピックの個人戦でメダルを取れたにも関わらず、この快挙に対して非難の言葉が少なくない。選手が国のために努力してメダルを取ってくれたというのに、なんで選手をひやかしたりするのか、日本人には不思議かもしれない。

しかし、実は4年前の北京オリンピックで団体戦で銀メダルを獲得した卓球チームも、今回石川選手を破って銅メダルを獲得したフェン選手も、シンガポール代表とはいえ、シンガポール生まれ、またはシンガポール育ちではなかったのだ。周知の通り、シンガポールはちっちゃい移民大国で、シンガポールの人口はもともと中国、インド、東南アジアの諸国の移民からなっている。人口5百万人しかないこの国では、オリンピックでメダルを取れるような人材を育つというより、少しでも無難で可能性が広がる学業を重視してきたのだ。そのせいか、スポーツに関しては大して重要視されていない。その代わり、中国を中心に移民を迎えている中、スポーツ界で活躍してくれる人が大歓迎。

経済発展絶好調のシンガポールで安定した生活を望む人は少なくない。そのためにスポーツ界で活躍すればいい、という見方も少なくないだろう。移民を受け入れるなら、学業にとどまらず、スポーツ界でも海外の人材を欲しがるシンガポール政府。そのせいで、非難を受けながらも、ここ10、15年間ではシンガポールには海外の「人材」がどんどん入ってくる。

シンガポール生まれ育ちでもなく、シンガポールの教育も受けたことなく、シンガポールの「言葉」も知らない人は、果たして「シンガポール人」とは言えるだろうか?シンガポールを代表してオリンピックでメダルを取ってくれたって、誇りを持てるのだろうか。そういう声があがっているらしい。スポーツ界で活躍するためにシンガポールにやってくる人たちは、シンガポールという国に帰属感を持って、誇りを持って、戦ってくれているのか、それとも賞金を狙いにやっているのか。シンガポールを「代表」して、メダルを獲得しては、そのまま去っていってしまうと、シンガポール人は間違いなく裏切られるように感じるでしょう。

そもそも、「シンガポール人」というアイデンティティはどう定義すればいいのか。東京の23区を持つシンガポールは、経済の急成長のため、地元の若者をどんどん海外に送り、知識や経験などを積み重ねてもらって、そしてシンガポールに戻ってきたときはちゃんと貢献してもらうように政策を実施している。それから、シンガポールには欠けているもの、または不足しているものは、海外で見つけ、シンガポールに連れ込んでくる。シンガポールの成長のためにそういう手段を取らなければならないかもしれない。シンガポールの「人」が外に出て行ったり、入ってきたりするなか、「シンガポール」のアイデンティティがますますあやふやになってくる。

「外国人」が非常に少ない日本ではあまり想像しがたいことなのだが、これから国際化していく日本が将来のために考えるべきことだと思う。私は、個人的にはシンガポールがオリンピックでメダルを獲得できたことに対して誇りに思う。ただ、そのまま去っていくのではなく、ちゃんとシンガポールに住み慣れ、シンガポールが誇りに思える人になってほしいと思う。

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