クリスマスは本来、イエスの誕生をお祝いする重大な一日である。キリスト教徒にとっては一年で一番大切な一日といっても過言ではない。しかし、宗教がそれほど日常生活に浸透していない日本では、クリスマスというのは、イエスの誕生を祝うよりも、恋人の誕生の刺激となる元なのではないだろうか。というのも、クリスマスの1カ月前に街に出てみれば、普段とはいっぺん変わった風景が目に入る。イルミネーションが至る所で主役の恋人達を照らしていて、どこからとなく流れてくるクリスマスソングも、いかにも映画のワンシーンであるかのように、ロマンチックな雰囲気を作り上げている。

今までのクリスマスは、主役の台本を渡されなかったため、舞台には立ちあがれなかった。ただ密かに舞台裏で自分の人生を嘆いていた。舞台には立てなくても、観客席から鑑賞するのも悪くないだろうが、やっぱりいつかはその舞台に立ってみたいと思った。

今年のクリスマスは・・これ以上求めることができないぐらい、素敵な一日を授かった。

クリスマスイブにバイトが終わって、いつものようにバイトの同僚と話しながら、駅へ歩いた。いつものように終電の時間に帰るのだが、その翌日は草津温泉に行く予定だということでわくわくしてた。とその時、彼女から一通の電話がきた。

ちょうど12時を過ぎたので、メリークリスマスを言うため電話かけてきたのか・・・と思わずにやにやしながら電話に出た。

「今どこ??店の外で待っているよ!」といきなり言われて、状況がわからなくて混乱していた。頭の中で言われたことが整理してみたらやっと状況が把握できた。彼女がサプライズでバイト先まで迎えに来てくれたのだ。しかし、その日の最終電車があと5分で着くが、バイト先から駅までは歩いていくには10分ぐらいかかる。終電にはもう間に合わないが、仕方なく駅を出て迎えに行った。サプライズが失敗して泣きそうになる彼女が歩いてきたときに、疲労感はどこかへ消えてしまって、笑顔が綻んだ。

クリスマス当日に新幹線で軽井沢に行った。軽井沢で昼食を取ってからバスで草津温泉へ向かった。バスの中から眺める景色はだんだん白くなってって、いつの間に雪が降り始めた。ホワイトクリスマスというのはこんなものだったのか。

草津温泉に着いて、ひゅーひゅーと降ってくる粉雪に、興奮が抑えられなくて、思わずカメラを出してぱちぱちとクリスマスの思い出を形にし始めた。旅館で荷物を下ろしてから観光スタート。さすがクリスマスだけあって、観光客も多くて、聞こえてくる色々な国の言葉に私が更にテンションが高まった。

草津温泉では臭いと思うぐらいの硫黄の濃厚な匂いが漂っていた。これこそ温泉なんだと、納得できた。

今日は今年の冬で一番寒いよと、店の人が言った。温度計には、-7度と表示していた。まさかの氷点下。私達は震えながら観光を続けた。夜には豊富な食事が用意されていた。二人が食べきれないぐらい量が多くて、挙句の果てに、吐き気でもしそうになって完食を断念してしまった。

クリスマスが終わり、翌日に再び草津温泉の街へ。

氷点下の街を歩いているうちに、体の免疫が下がったせいか、震えが止まらない私達を見た、店員さんがドアを開けて中へと誘った。見本の健康茶を小さいコップに注いで渡してくれた。寒いわね・・と優しい笑顔を見せてくれた。

こんな寒い冬だからこそ、人間の思いやりが暖かく感じるのだ。

暫くしてから、店を出て店員に紹介してもらった洋食屋に昼ごはんを食べに行った。途中案内してくれた現地の人に、なぜか「留学生ですか」と聞かれて、少し戸惑ってしまった。寒くなるとろれつが回らなくて日本語がおかしくなっちゃったのかもしれない。

草津温泉で最後の食事を終えて、バスで東京に戻ってきた。途中の交通渋滞で1時間遅れて着いて、しかも車酔いしたせいか気分悪くなったけど、今年のクリスマスは間違いなく一番素敵だった。

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