「涙と笑いのハッピークラス」は金森俊郎先生の特殊な授業のやり方についてのNHKドキュメンタリーです。教育、道徳、子供育成、それから一般的な人生について関心のある方には是非お勧めしたいドキュメンタリーです。

先週、シンガポール親切運動の通訳の仕事で、金森先生のいらっしゃる金沢にある北陸学院大学に一緒に同伴させていただいた。

最初は金森先生のことをあまり知らずに行ったので、後からこのドキュメンタリーを見て、なんてすばらしい人間だなって思った。私自身も教育に興味があって、現代教育には批判したいところもあるけどどこから手をつければいいのかわからないが、金森先生の話を色々聞かせていただいて目から鱗が落ちたかのように、色々悟った。もちろん、現代社会に応じて、仕事を見つけるには必要なスキルや知識が増えてきて、それと引き換えに道徳や人間関係などといったところが犠牲にされざるを得ないと思った。これこそ私たち若い世代の担うべき責任でもあるし、私たちの今後の課題でもあるのではないかと思った。

しかし、金森先生がおっしゃるには、昔の日本人が親切で今の若者はもはやそういうところを失ってしまったわけではない。問題は、今の人はそういう親切なところを発揮する場面もなければ、重視もされないだけなのだ。学校の勉強や仕事、それから遊びに追われて、せわしくなった今私たちの生活には、他人に対する思いやりはだんだん優先順位の下に陥ってしまう。それから、メディアもエンターテイメント(娯楽)のほうに中心を置き、世の中のことが無関心になってしまう。例えば、地震や暴雪などの天然災害に襲われたとき、ボランティアとして積極的に手を差し伸ばすのは若者が多いらしい。この現象は昔ではなかなか見れなかったかもしれない。というのは、今の社会では人と人との距離感が近くなったにもかかわらず、皮肉なことに、私たちは周りの物ごとに関心をなくしている。自分から動こうとすれば、可能性は無限大。なのに、みんなは自分の利益、享受のために生きているだけで、誰も最初の一歩を踏み出さない。

今回の取材で金森先生が教育のおける最も重視している点をおっしゃっていただいた。ひとつは、子供の力。子供たちが持っている力はだいたい大人が思う以上に強い。子供たちは最初理屈などを考えずに、どっちかというと感情で動いている。大人の行動を観察して深く考えずに真似ることが多い。だから、大人が外から物ごとを教え込もうとするのでなく、子供たちが自分自身に教えるというか、子供たちに物ごとを悟ってもらうのが大事だそうだ。自ら共感ができて身についた知識や価値観のほうが自分らしく豊かに生きられる。

二つ目は、このドキュメンタリーでも取り上げられた「手紙ノート」という、一日の始まりに子供たちが自分の書いた日記、素直な気持ちをクラスの前で読み上げること。この「手紙ノート」のきっかけというのは、現代の学校のでは宛てのない文章を学生に書かせすぎるところ。文章と言うのは、誰かに読んでもらうために書くものだと。なのに、今や学校で書いている作文はほとんど先生以外、誰にも読んでもらえない。そして、自分が書きたいことではなく、「正解」だと言われたことを書かされるだけだ。子供たちは言いたいことをいっぱい背負って登校し、家に帰るのに、学校に着いたら授業で色々教えられ、覚えさせられる。家に帰ったら、宿題に追われ、両親も仕事や家事で忙しくて話す時間がない。こういう生活に切羽詰められた挙句、子供たちは素直な気持ちになれなくなり、言いたいことも言えなくなったという。場合によっては、話し相手がいないから、テレビやゲームに夢中になってしまう。

「手紙ノート」というのは、子供、または一般な人間に素直になってもらうための手段のひとつである。人に伝えたいことを伝えてもらう。それに、クラスの中では、普段一緒に授業を聞くだけで「奥行き」がわからなくて、その人を本当に理解することができない。こういう企画を通して、お互いの共通な趣味や話題を見つけ、より一層仲良くなることができる。このドキュメンタリーでは、おばあさんが亡くなった男の子がそれを手紙ノートに書いたおかげで、クラスの人も一人一人自分の体験を発言し、ずっと言えずに心に秘めていた女の子も3歳のときに亡くなった自分のお父さんの話を初めて明かした。こうした環境で育ったら、私たちももっと素直に生きていけるだろう。

人生や道徳などはもちろん重要だけど、現実的に見れば、科学や数学なども欠かせないのではないか?という質問を金森先生に聞いたところ、「道徳というのはありとあらゆるものと関わっているから、科学などを道徳と切り離して教えてはいけない」と。確かに、科学をやればやるほど、道徳や人生・命との関わり合いが見えてくる。例えば、農業の科学の話をすると、深く掘れば掘るほど、水、肥料、そして生きものの糞が欠かせないということがわかって、我々が生きている環境の関わり合い、またそれぞれの物の大切さがわかってくる。それは人生の尊重という道徳の授業になるし、水の大切さと言う授業にもなる。今学校で教えている科学は「結果としての科学」なので、その過程が見えてこない。科学をもうちょっと原点からみれば、大切な道徳の授業にもなると、金森先生がおっしゃった。

最後に、涙と笑いのハッピークラスというドキュメンタリーをみんなに見ていただきたいと思う。これは英語版だけど、ビデオの中の会話はすべて日本語なので、英語がわからなくてもドキュメンタリーの伝えるメッセージはだいたいわかると思う。

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